アフロディテと子猫に乾杯

愛しいものにはできるだけキスしたい

「君の名前で僕を呼んで」 感想


原題は"Call me by your name"。
日本での公開より一足お先に観てきました。
予想していた以上に、傑作でした。


https://youtu.be/Vt6Al_XSpXE
(予告編です。まず、どうぞ!)


舞台は1983年の夏、北イタリアの避暑地。17歳の主人公、エリオの視点で物語は繰り広げられます。大学教授をしている父の助手としてアメリカからやってきた大学院生のオリヴァー。ふたりは夏の間だけ隣の部屋で住むことに。最初こそエリオはオリヴァーに反感を抱いていたものの、気づいたらお互いに惹かれ合っていきます。しかし、夏の終わりが近づくにつれ、やがてオリヴァーと別れる日が近づいてきて……



という感じのお話です。

まずですね、同性愛者に観てほしいとか、同性愛を理解したい人に観てほしいとか、そんなではないんですよね。人生で一度でも「恋」をしたことある人なら、誰かを好きになったことある人なら、誰でも共感できると思います。


気づいたら相手を目を追っていて
相手が何をしてるのか気になって
気を引こうとして
愛おしくなって
止められないスピードで感情が昂ぶっていくあの感じを、猛烈に誰かを欲する感じを、エリオ視点でいっしょに体感することになるでしょう。目は口ほどにものを言う、なんて言いますけど、本当にそうで、口ではあんなやつ、みたいな態度を取りつつもオリヴァーから視線を反らせないエリオが可愛くて、可愛くて!笑



あと、このヨーロッパ特有のバカンス制度を舞台にした映画って、すごく好きです。バカンスの間だけ、北イタリアや南フランスの避暑地で過ごし、そこで一夏の恋に溺れる…みたいな。
うーん、憧れる!!!


サガンの「悲しみよ、こんにちは」を思い出しました。サガンほど捻くれてないというか、癖のある感じではないですけど、サガンの恋愛小説のような上品で、懐かしくて、言葉にできない哀愁が漂っています。
と、思ったら、イタリア・フランス・ブラジル・アメリカの合作映画なのですね!タイトルが英語なのでアメリカかイギリスの映画だとばかり思っていたのですが、伊仏の絡む作品てやたら情景描写が上手くて、美しくて、切ないイメージがあります。「ベニスに死す」とかみたいな、舞台は太陽の真下なのに、なぜかアンニュイ雰囲気が漂うんですよねぇ。


舞台の北イタリアの雰囲気も、またいい味を出しています。水着でビーチバレーに励む学生たち、外で食べる朝食の景色、アプリコットジュース、憎らしいほど輝く太陽と青空、湖や林などの自然、夜遊びの雰囲気、街中の景色はフィレンツェみたいで、明るくおしゃべりなイタリア人たちが画面を彩ります。
わたしも人生に一度でいいから、北イタリアやら南フランスやらその辺で、一夏を過ごしてみたい。誰か別荘とか貸していただける方、募集しています。



個人的にすごく魅力的だなぁ、と思ったのがエリオの両親。舞台設定が1983年にも関わらず、息子の同性への恋心へも寛容で、難しい年頃のエリオを包んであげる空気感で満たされています。あと、わりとエリオくんが泣き虫で作中ちょいちょい泣くのですが、両親の前でも泣いていて、17歳の少年が堂々と目の前で泣ける親って、すごいと思います。17歳の頃のわたしは、恋に悩んで部屋に引きこもって泣いていたぞ。そんな主旨の映画ではないのに、「いつか子どもができたら、こんな親になりたいなぁ。」なんて思ったり。



ゆっくりしたスピードだけれど、猛烈なスピードで2人の恋心が炙り出されていく様子は、疑いようもなく美しかったです。素敵、としか言いようがない。
多少見ていて気まずくなるシーン…というか、やや性的なシーンもありますが、友達と、恋人と、家族と、むしろ一人で、ぜひどうぞ。わたしの左隣はお一人様のマダムと、母娘でした。ちなみに同性カップルと思われる方も3組ほどいたのですが、劇中にキスしだすカップルやら、号泣するカップルなど様々で、面白かったですね。
フランスとの別れを控えているわたし個人としては、お別れシーンの切なさに胸を打たれ、途中から涙で視界を阻まれ大変でした。


唯一心残りなのが、言語の壁。これは完全にわたしの落ち度なんですが、インテリジェンスな作中の主人公たちは、英語、フランス語、イタリア語を使い分けて話す上に、字幕がフランス語だったため、頭の中でさまざまな言語が混ざって混乱してしまいました。考古学の話とかしてたのですが、何がなんやらよく分からない。帰国したらちゃんと日本語字幕で見て、より鮮明に理解したいと思います。

ともあれ、すごくよかった。
余韻に浸って寝るぞ〜!





おまけ。
暖かくなって来たので生足デビューしました。
しかし服はだれよりも冬。
つらい。